真心の愛を君に......。 〜 運命の恋は結婚相談所で ~

”真綾”......母の名前。

涙がこぼれた。

さっき広務さんの腕の中で止まったはずなのに。

本当に私は広務さんの前では泣いてばかり......。

「俺、優花を泣かせてばっかりだ......。自分の不甲斐なさに心底打ちのめされる。だけど、俺は全てを諦めない。今も、これからも、何十年先も、ずっと......。この胸で、腕で、俺の全てで優花の涙を受け止める」

.......広務さんっ.......。

「涙の代わりに、笑顔と幸せを与えたい」

「広務さんっ......、私、わたし.......っ」

「もう君を追い求めるのはやめる。今度こそ、絶対に君を離さない」

そう言って彼は私の泣き顔を胸で受け止めて、守るように抱きしめた。

私は黙って目を閉じて彼の胸に揺られながら時の赴くままに身を委ねた。

人通りが少ない街角に、そこはかとなく風が吹き抜ける。

風に感じた彼の香りを確かめるように軽く空気を吸い込んだとき、タイミングを同じくして彼が囁いた。

「来て。一緒に」

「?」

私は彼の胸からひょっこりと顔を出して瞳で問いかけた。

目を丸くする私に広務さんは、ただただ微笑むばかりだった。

「行こう」

「えっ?どっ、どこに?」

もしかして......母のところ!?

広務さんは、しどろもどろする私の手をぎゅっと握り真っ先にある場所目指して突き進んだ。

「ちょっ......、ちょっと待って、広務さんっ!?」

彼の勢いに押されて、おぼつかない足取りの私はとっさに声をあげた。

そんな私とは対照的に、やたらと冷静な彼の反応。

「こっち」

「へっ......!」

そうこうしているうちに彼の足取りが止まり。私は門前に立たされていた。

綺麗に磨かれた厚いガラス扉を開けて中へ入ると、早速一人の女性が私達を出迎えた。

黒のスーツのインナーに白いアセテートのカットソーを合わせて足元はポインテッドトゥの6センチヒール。

フォーマルな出で立ちに似合うようにメイクはベースに重点を置き、リップやチークは清潔感を意識している。もちろんヘアスタイルも、すっきりとまとめてバングはななめに流して好感をもたせていた。

広務さんは、その人と目があうや否やはっきりとした口調でこう言った。

『俺達に似合う結婚指輪がほしい』