真心の愛を君に......。 〜 運命の恋は結婚相談所で ~

私が今ここにいる理由や、広務さんがここにいる理由。全ての因果を置き去りにして私達は抱きしめ合った。

「これって、運命? 奇跡?......なんか、らしくないこと言ってるな俺」

腕の中で彼の嬉々とした声が聞こえた。

「私、広務さんに会いに来たの」

それを聞いた彼は私を抱きしめる腕により強を込めた。

「ここにいるって、どうして分かったの?」

「ううん、分からなかった。私、何度も広務さんに電話したけど繋がらなかった......。だから、もうダメかもって......」

「そっか......。ごめんね。仕事中はプライベートのスマホは使ってないんだ。もしかして、あてもなくニューヨーク中を探してたの? それとも......」

広務さんは腕を解いて瞳を揺らせながら私へ問いかけた。

きっと彼は私が母に会う目的で、この場所を訪れたとは想像もしていない。

それよりも、この場所と私達を繋ぐもの。それは、彼が私へのエンゲージリングを買ってくれた今私達の目の前に構える老舗のジュエリーショップ。

このお店をたよりに。広務さんは私がこの場所へ来たと思ってる。

「......お母さんに会いに来たの?」

えっーー?

私は予想外の彼の言葉に頭が真っ白になった。

そして、半ば無意識で頷いていた。

「今日この場所で優花に会えなくても、俺の方から会いに行ってた」

「それって......?」

状況が理解できずに混乱する私へ彼は諭すように話を続けた。

「ニューヨークに来てすぐに俺は、あのビルに出行することになった」

広務さんは母が働いているというビルを見上げて目を細めた。

「驚いたよ。初めて取引先に連絡をした時に、電話を受け取った女性社員の名字が日野だったから。でもさ、同じ名字なんてごまんとあるだろう? その時は、君への未練で過敏になってるだけだって自分の心に蓋をした。それから、実際に取引先へ出向いた後も、その日野という女性は優花とは別人だった......」

彼の口から紐解かれてく真実に私の胸は強く脈打っていた。

「でも、どことなく似てたんだ。年齢も何もかも違うはずなのに。特に声が......」

私の記憶に残る母の声。線が細いけど決して弱々しい感じじゃなくて、親近感のわく中音の声。

「優花からお母さんの話を聞いてたから、まさかとは思ってた。真綾さんから優花の名前を聞いた時、俺は雷に撃たれたような衝動にかられた。どうしても優花をお母さんに会わせたい。お母さんは、優花と離れてから今まで片時も君のこと忘れたことなかったって......」