広務さんがニューヨークに居ること、ジークと婚約してたはずの私が、ニューヨークから独りで帰国したこと。その両方を知っている実加は、長らく傷心の私に新しい恋をもたらそうとしてくれた。

友達の心遣いは、ありがたいし、確かに昔の恋を忘れるには新しい恋ーー。その考えに私も賛同する。

……けど、そもそも昔の恋には、なってないんだよ。広務さんのこと。

でも、昔の恋にしなきゃって、奮闘してるんだけど全然出来なくて。

一体どうすればいいの!?

「うん……、考えとく。ありがとう」

実加のせっかくのお膳立てにもかかわらず、イマイチ気乗りしない私は歯切れの悪い返事をした。

私からの芳しくない返事を受け取った実加は怪訝な表情をしながら私の顔を覗きこむ。

「……重症だね。その様子じゃあ、本人に会って決着つけないとダメみたいだね。……会いに行ってきなよ。広務さんに。今度は、偶然じゃなくて」

「え……、でも。だって私から別れたのに……。彼だって、私とニューヨークで再会したとき、引き止めなかったし……」

「だっても、へちまもないっ!!」

実加の大声が昼休憩のオフィスに響いて、社内中の視線が私達に集中した。

注目の的となった私達は小さくなって謝った。

「……とっ、とにかく。きちんと自分の気持ちに決着をつけた方がいいと思う。どっちから別れたとか、関係ないよ。てか、優花の中で終ってないじゃん。今の気持ち、うやむやにしてて平気なの?」