真心の愛を君に......。 〜 運命の恋は結婚相談所で ~

持ち帰ったメモをエレベーターの中で取り出した。

"1007"

この下の階......。

彼に会いに行く?

迷ってる時間はない。悩んでるうちに10階は通り過ぎる。

体感時間3分の決断だった。

「彼には会いに行かない......っ!」

私は自分しか乗っていないエレベーターの中で声に出して決意表明をした。

そうまでする必要があった。

彼と交際中の時に、私以外の女性の影を見たことを思い出しておきながら、それでもメモを持ち帰ってしまった自分の愚かさに喝を入れるため。

それと、痛切なジークからのLINEを無視して広務さんに会いに行く気には、さすがになれなかった......。

やっぱり、ジークには連絡しなきゃ。

思いつめた私はエレベーターが一階に到着する間際にバッグからスマホを取り出した。

スマホに表示された現在時刻はAM8:12

ジークは今......どういう状況?

起きてるか寝てるかも分からないけど、とりあえずLINEを返そう。

「心配かけてごめんなさい。私は大丈夫。とにかく今は、あなたと会っても一体何を話したらいいか分からない。だから、独りで日本へ帰らせてください」

熟考したすえに送ったメッセージがこれだった。

このままジークと会わずに独りで日本へ帰ると決めたけど、その先に立ちはだかる壁は相当高い。

言語の問題。今日付けの日本行きの便の確保。空港へのタクシー代と今日の飲食代......他にも色々とお金はかかる。

何せここニューヨークで無料の物はないから。

「はぁ〜.......っ」

ため息を漏らしながら宿泊代をカードで支払った。

『行ってらっしゃい。良い一日を』

フロントの人が笑顔で何か言ってるけど......なんて言ってるの?

ともかく。ここは私も笑顔で乗り切ろう。

てか私。初っ端からこんなんで、ちゃんと日本に帰れるのかな.......。

目の前のネイティブイングリッシュに圧倒されて決意虚しく弱気になる。

と、都合よく思い出した彼の言葉。

”何か困ったことがあったら”

「おはよう」