真心の愛を君に......。 〜 運命の恋は結婚相談所で ~

去り際に差し出されたメモ。

「1007......」

それは、広務さんが今夜泊まる部屋の番号だった。

”俺の部屋番号”

彼の声が頭の中にリアルに再現される。

彼は今、この下の階にいる。何してるのかな.......?

もう寝たかな?それとも、シャワーでも浴びてるのかな?

不毛な妄想と胸の高鳴りは、きっと彼がくれた、この直筆メモのせい。

私はやり場のないときめきを抱え込みながら独りベッドへ倒れこんだ。

つい昨日までジークと寝ていた高級ホテルのベッドより、今独りで身を横たえているこの安ホテルの、薄いベッドの方がずっと心地いい。

寒々とした白いシーツも、少し貧相な枕も簡素なベッドフレームも、なぜか愛おしい。

ありきたりなベージュの壁紙も、備え付けのテーブルと椅子も今夜だけは特別。部屋全体が甘い空間へと変化してる。

それは彼が同じホテルに泊まってるから。

.......また私、思い上がってない?

広務さんから渡されたメモを見つめながら考える。

落ち着いて。

今は恋人は「いない」って言ってたのは、フェイクだって。

じゃなかったら、彼は今頃この部屋に来てるはず.......。

シングルベッドに、ぽっかりと空いた半人分のスペースを手のひらで撫でてみると、今まで浮かれ調子だった自分はなりを潜めて今度は、やけに冷静で悲観的なことばかりが浮かんだ。

彼が私の部屋を訪ねなかったのは、彼の中で、もはや私は女ではないから。というか、結局のところ日本にいた頃からすでに彼にとって私との結婚は人生計画の一コマに過ぎなかったーー。

その代わりに広務さんは私との交際中に他の女性とカフェでデートしてた。

もしかして、その女性と今も......。