一つの部屋の前、お互いに次の行動をうかがって膠着状態に陥る。
広務さんと再会を果たしてからここまで、私は十分に自分の気持ちを再認識した。
私の気持ちに対しての広務さんの答えも決して否定的なものではないと感じている。
ここで私がさらに一歩踏み込んで、この部屋のドアを開けたら彼はーー。
「......ここまで送ってくれてありがとう。じゃあ、おやすみなさい」
私は彼を試すつもりで、鍵穴にキーを差し込んだ。
彼に背を向けて部屋の扉を開ける。その間に彼から特別に声がかかることはなく、すんなりと入り口が開かれて私は一人で部屋へ踏み込むことになった。
「おやすみ」
広務さんは私が部屋へ入ったことを見届けると安定した声色で決別の言葉を放って、廊下と部屋を隔てる床の色を境界線として決して私の部屋へは立ち入らなかった。
理性的な彼の選択に胸がズキンと痛んだ。
今現在の彼と私の関係性、過去の出来事、プライドさえも全てを葬って願うのなら、私は強引にでも彼から求められたかった......。
私は胸の痛みを作り笑いで必死に誤魔化しながら、部屋の扉を閉めようとした。
”今夜は運命の再会”なんて浮かれていたのは、私だけで。やっぱり、広務さんは出会った頃から何も変わっていない。
私の2歩も3歩も.......ずっと先を歩いている存在。
そうだよね。
こんなに素敵な男性。今は恋人は、いないって言ったけど、それは詮索されない為のフェイクかも......。
我ながら、かなり的を得た考察だと思った。
きっと、そうに違いないと自分に言い聞かせて、彼と私を完全に遮断すべく思い切って部屋の扉を閉めた。
「あっ!ちょっと待ってっ、これ.......っ」
扉が締まり切る寸前だった。
彼が慌てた様子で狭い扉の隙間から何かを差し出してきた。
「えっ!?、これ.......!?」
広務さんと再会を果たしてからここまで、私は十分に自分の気持ちを再認識した。
私の気持ちに対しての広務さんの答えも決して否定的なものではないと感じている。
ここで私がさらに一歩踏み込んで、この部屋のドアを開けたら彼はーー。
「......ここまで送ってくれてありがとう。じゃあ、おやすみなさい」
私は彼を試すつもりで、鍵穴にキーを差し込んだ。
彼に背を向けて部屋の扉を開ける。その間に彼から特別に声がかかることはなく、すんなりと入り口が開かれて私は一人で部屋へ踏み込むことになった。
「おやすみ」
広務さんは私が部屋へ入ったことを見届けると安定した声色で決別の言葉を放って、廊下と部屋を隔てる床の色を境界線として決して私の部屋へは立ち入らなかった。
理性的な彼の選択に胸がズキンと痛んだ。
今現在の彼と私の関係性、過去の出来事、プライドさえも全てを葬って願うのなら、私は強引にでも彼から求められたかった......。
私は胸の痛みを作り笑いで必死に誤魔化しながら、部屋の扉を閉めようとした。
”今夜は運命の再会”なんて浮かれていたのは、私だけで。やっぱり、広務さんは出会った頃から何も変わっていない。
私の2歩も3歩も.......ずっと先を歩いている存在。
そうだよね。
こんなに素敵な男性。今は恋人は、いないって言ったけど、それは詮索されない為のフェイクかも......。
我ながら、かなり的を得た考察だと思った。
きっと、そうに違いないと自分に言い聞かせて、彼と私を完全に遮断すべく思い切って部屋の扉を閉めた。
「あっ!ちょっと待ってっ、これ.......っ」
扉が締まり切る寸前だった。
彼が慌てた様子で狭い扉の隙間から何かを差し出してきた。
「えっ!?、これ.......!?」


