真心の愛を君に......。 〜 運命の恋は結婚相談所で ~

えっーー!?

私は思わず声が漏れそうなところをどうにか押さえ込むと、代わりにしっかりと目を見開いて彼の表情を窺った。

「大丈夫。部屋に押し入ったりなんかしないよ」

目と目がバッチリと合った状態で、こんなに端正な顔立ちの彼にそんなこと言われたら.......。

否が応でも想像してしまう。

もし、勢い甘んじて広務さんが今夜私の部屋を訪れたら、2年前みたいに恋人同士に戻れたりしてーー。

ううん、でもそんなこと。広務さん自身が部屋には入らないって言ってるんだから。そう、彼は昔のよしみで純粋に気にかけてくれてるだけだって。

「荷物持つよ」

「あっ、でも.......」

「早く行こう。ここにいると、いつさっきのヤツらが戻ってくるか分からないし。......まぁ、戻ってきたところで、優花を守るためなら俺はいつでも......」

「えっ?何?」

「......いや、なんでもないよ。さあ、早く行こう」

「あっ!広務さんっ!」

部屋まで送ってもらうかどうか、考え途中の私をよそに。広務さんはヒョイっと私からキャリーケースを奪うとスーッとスマートに引きながら、困惑する私を見て余裕の笑顔を浮かべた。

「早くおいで」

「あああっ、はいっ」

私は言われるがまま。あたふたしながら、彼の後をついて行った。

この構図。恋人同士だった頃と一緒だなぁ.......。

私、いつも、いつも広務さんのこと追いかけてた。私なんかじゃ、到底広務さんみたいな素敵な男性とは釣り合わないって思ってた。

2年ぶりに再会した彼は、やっぱり素敵だった......。

いかにも女物な私のキャリーケースを堂々と引き、反対側の手には仕事の資料やノートパソコンが入っている重たそうなビジネスバッグを持って、両手がふさがっている状態で歩く後ろ姿から漂っていたのは疲労感ではなく、むしろ広い背中からは包容力が溢れていた。

日本にいた頃、彼はほとんど毎日残業をこなしていて帰りは、いつも夜遅かった。今日もこんな夜中にスーツ姿で......まさか今まで働いていたのかと思うと、胸がギュッと締め付けられた。

「広務さんは、どうして今夜このホテルに?」

いくら元恋人同士の仲とは言え、今は他人.......。不躾な質問だとは分かってる。

でも、どうしても彼の現状が知りたくて抑えられなかった。

二人きりのエレベーターの室内で、私は上目遣いに彼を見上げながら聞いた。