真心の愛を君に......。 〜 運命の恋は結婚相談所で ~

入り口のあたりから声が聞こえる。

なんて言ってるか分からないけど、どうもこっちの方に向かって言ってるみたい......。

まさか、この男たちの仲間!?

嫌だ。怖い......!!

私は自分の置かれている状況が最低に危機的な立場だと再認識させられた。

半ばパニック状態に陥り、目に涙が浮かんだ。

恐怖に震えて、もう言葉を発することさえできない。

誰か、誰か助けて......!!

私、これからどうなるのーー。

心の中で叫びながら身をすくめて身動きが取れないでいると、不思議なことに男達は諦めたのか私のそばを離れた。

男達の足音が遠ざかっていくのを聞き届けた後、恐る恐る振り返ってみると彼らは今度は入り口の方でスーツ姿の男性と話していた。

雰囲気から察するに何やら険悪なムード......。

『シラけんなぁ、自分の女なら、ちゃんと管理しとけっ!!』

ホテルの狭いロビーに先ほど私にしつこく付きまとってきた男達の怒号が響いた。

きっと、大声に驚いたホテルのスタッフは怪訝な様子で急ぎフロントに戻って来た。

『ちょっと、ここでケンカはやめてちょうだい。警察を呼ぶわよ』

フロントのスタッフの言葉を受けて、スーツ姿の男性に怒鳴り散らしていた男二人組はスタッフを一瞬睨み付けると”チッ”っと、舌打ちでもしたかのような悪態をつき、乱暴にドアを開けて外へと出て行った。

ーーともかく、助かった......。

私は安堵した弾みに腰が抜けてしまい、床にへたれ込んだ。

「大丈夫?」

「あ、はい。すみません.......」

日本語で声をかけられて、とても懐かしさを感じた。

この人は、さっき男達と話していたスーツ姿の男性だ。男達の体に隠れて顔は見えなかったけど、濃紺のスーツの足元が下を向いていても目に入ってきた。

「大丈夫?立ち上がれる?」

「はい......。大丈夫です。ありがとうございます」

「俺に掴まって」

男性は声をかけてくれたばかりではなく、私を気遣い優しく手を差し伸べてくれた。

差し出された手のひらを見て、”まさか....."という気持ちになった。

強い想いに突き動かされた私は、”パッ”と、顔を上げた。

「久しぶりだね......」

「嘘でしょ......!!」

懐かしさと、安堵感、何よりも私はまだ彼を忘れていなかった。永遠に来ないはずの待ち人を目の前に堰を切ったように涙が溢れ出した。

「広務さん......!!」