まだ何を言われたわけではないけれど、私は妙に納得していた。
うん......。やっぱり、今まで歩んできた道は間違いだったんだ。
「君が、まだ成瀬と付き合ってた時にオレとバーで会った夜のこと覚えてるよね?」
「うん」
もちろん。忘れるわけがない。
あの夜がきっかけで、すべての歯車が狂い始めた。
”自業自得”
ジークはそう言って自分を責めたけれど、それは私の事だ。
だって、あの時。私はまだ広務さんと交際中にもかかわらず.......。
「酔った君をオレの部屋へと連れて帰った」
忌々しい事実。そう記憶している。
硬く冷たい足元に張り付くような廊下。
暗がりで濁った視界。
体を埋もれさす深いベッド。
ジークと一夜を共にした翌朝の倦怠感は同時に、鈍器で額を殴られ続けているような頭痛を伴って絶望を引き連れてきた。
唯一救いだったのは、私には行為中の記憶が一切なかった。
「オレは君をベッドへと誘導して......」
「ーーやめて」
記憶が無いにしろ、ジークの口からあの時の様子が語られる事は断じて憚られる。
詳細を聞きたくない私は彼の口が次のシーンを語り出す前に、とっさに口を挟んだ。
その様子が、あまりにも切羽詰まって見えたようで、ジークは驚愕して目を見開くと”事”について語るのをやめた。
「......どう足掻いても、初めから君をオレのものにするのは無理だったんだな」
「え?」
不意に拾ったジークの呟きを、私はすぐには解読できなかった。
「あの夜、君はベッドの中で......」
うん......。やっぱり、今まで歩んできた道は間違いだったんだ。
「君が、まだ成瀬と付き合ってた時にオレとバーで会った夜のこと覚えてるよね?」
「うん」
もちろん。忘れるわけがない。
あの夜がきっかけで、すべての歯車が狂い始めた。
”自業自得”
ジークはそう言って自分を責めたけれど、それは私の事だ。
だって、あの時。私はまだ広務さんと交際中にもかかわらず.......。
「酔った君をオレの部屋へと連れて帰った」
忌々しい事実。そう記憶している。
硬く冷たい足元に張り付くような廊下。
暗がりで濁った視界。
体を埋もれさす深いベッド。
ジークと一夜を共にした翌朝の倦怠感は同時に、鈍器で額を殴られ続けているような頭痛を伴って絶望を引き連れてきた。
唯一救いだったのは、私には行為中の記憶が一切なかった。
「オレは君をベッドへと誘導して......」
「ーーやめて」
記憶が無いにしろ、ジークの口からあの時の様子が語られる事は断じて憚られる。
詳細を聞きたくない私は彼の口が次のシーンを語り出す前に、とっさに口を挟んだ。
その様子が、あまりにも切羽詰まって見えたようで、ジークは驚愕して目を見開くと”事”について語るのをやめた。
「......どう足掻いても、初めから君をオレのものにするのは無理だったんだな」
「え?」
不意に拾ったジークの呟きを、私はすぐには解読できなかった。
「あの夜、君はベッドの中で......」


