真心の愛を君に......。 〜 運命の恋は結婚相談所で ~

その日の夜、私はジークと共に宿泊先のホテルのバーカウンターに居た。

話題は当然、今日対面したジークのご両親のこと。

「父も母もオレが見初めた女性なら......とか言ってたけど、やっぱり優花だから結婚に賛成したんだよ」

そんな事は、ありえない。

結婚の挨拶にしては短すぎる時間の対面だったし、人生経験豊富で一大企業を経営するご両親の洞察力が鋭利だからといって、その日一目会った初対面の相手、ましてや正直素性も定かではない女性の人格を選定するのは至難の技......。

きっと、ジークのご両親はおっしゃっていた通り、息子を信じているから私みたいな人間でも許してくれたんだろう。

「本当にいいのかなぁ......私なんかで」

なんだか中身のない対面だった気がして、結婚を強行突破するような感じで、めでたいはずが、本来祝杯になるはずが、私の胸のうちは”どんより”と曇っていた。

「少しも嬉しそうじゃないね......。今朝パンケーキを食べてた時の方が、よっぽど嬉しそうな顔してた」

ジークはバーボンの入ったグラスを片手で強く握って、怒りを押し殺しながら言った。

やや語気の粗いジークを目の当たりにして、私は怖いのと同時に血の気がサーッと引いていく思いがした。

”一人になろう......”

土壇場で決断するのは早かった。

「ジーク。私、今日あなたのご両親とお会いして、今まで自分がいかに浅はかだったか理解した。あなたがいかに私を肯定してくれたとしても、その気持ちに甘んじてあなたのご両親をないがしろにするわけにはいかない......」

急転直下の出来事をジークは予想していたかのように、冷静に聞いていた。

「終わりにしたいってこと?」

私は黙って頷いた。

「.......なんだよ。此の期に及んで結局コレかよ」

ジークは悔しさで傷ついたみたいに喉を詰まらせた。

「自業自得だな......、オレは。優花、君に謝らなきゃいけないことがあるんだ......」