真心の愛を君に......。 〜 運命の恋は結婚相談所で ~

英語が話せないことを、これほど肩身が狭く感じたことはなかった。

ジェントルマンなジークのお父さんは何度か視線を私に投げかけて、それから英語でジークに何か言った。

お決まりのように日本語しか話せない私はベストなリアクションも言葉も発せずに、何とか、しおらしく振る舞うのが限界だった。

「父さん、母さん、こちらが日野 優花さん。オレの大切な女性だよ」

ジークが通訳してくれるのは、ありがたいけど......、前フリなしで”大切な女性”と紹介されて、穴があったら入りたいくらい恥ずかしい。

案の定。ご両親の、この反応。

拍子抜けした感じ満載で、お父さんが私を凝視してる......。

「初めまして優花さん、ジークフリートの母のミランダです。今日は、お会いできてとても嬉しいわ」

こんな、ちんちくりんな私に明らかに気を使ってくれたジークのお母さん。ハリウッド女優のような華やかな美人なうえ、気遣いも超一流。

「初めまして。日野 優花と申します......。お会いできて光栄です。よろしくお願いします......」

私は気後れして、もじもじしながら頭を下げた。が、その時もジークのお父さんは、ずっと私を見据えたままリアクションがない。

えーー?どんなに私がちんちくりんだからって、相手が大企業の社長さんでも、ジークのお父さんでも、初対面の相手に対してさすがに失礼じゃない......?

腑に落ちない気持ちで、私もお父さん同様固まる。

すると、素早く異変を察知したジークが話題を振った。

「いやぁ......本当、日本で住んでるマンションの隣の部屋に、まさか運命の女性が居たなんて、まさしく"serendipity"だよ。 父さんもよく言ってるよね、人生で大切なのは、いかに幸運な偶然を積み重ねるかだって。ね?父さん。父さん.......っ!」

「おお、これは失礼!優花さん、初めましてジークフリートの父のジョンです。今日はお会いできて本当に良かった......。ジーク、そうだな。お前と優花さんが出会ったのは、本当に出会うべくして出会ったのかもしれないな......」

「なんだか、改めて父さんに言われると恥ずかしいよ」

息子のはにかんだ姿に目もくれず、ジークのお父さんは相変わらず私の顔をじっと見たまま、何かを尋ねてきた。
 
「.......ところで、優花さん。失礼ながら、あなたのご両親はーーお母さんは、ご健在かな?」