ジークの問いかけにスマホから貫禄のある男性の声が漏れた。
それ以降、スマホ越しの男性とジークとの英語でのやりとりは、低スペックの私なんぞには到底理解できるはずもなかった。
一人取り残された私は、とりあえず、この明らかに大企業な社内をぐるっと見渡して見る。
ビルを構築する柱と柱の間に、はめ込まれた巨大なガラスは全て綺麗に磨かれて真水と見紛う透明な物体を経て太陽光が真っ直ぐに通過している。
その日の光が行き着く先は、これまた内部が完全に透過した地上から縦に長い長いシースルーエレベーター。
エレベーターの終着地は、きっと社長室で、そこにはジークのお父さんが.......。
「上がって来いだってさ」
いつの間にか電話を終えていたジークが、まるでコンビニにでも誘うかのような軽いテンションで言った。
反対に私は緊張のあまり、あたかも関節が硬くなってしまったかのように膝をまっすぐに伸ばした奇妙な歩き方をしながら、悠々と前を進むジークの背中を追いかけた。
フロアの中程、社長室へと続くシースルーエレベーターまで後少しというころで不意にジークが立ち止まり私の方を振り返った。
「あのさ、本当に緊張しなくていいからね。こういう会社やってるからって、うちの家族みんなフランクだから」
「きっ、緊張しなくていいって言われて、緊張しない人なんかいないよっ!こんな大きな会社を経営されているのもそうだけど、それ以前に少なくとも私、あなたの婚約者としてご両親にお会いするんだから.......」
「そう、オレのフィアンセとしてね」
ジークは嬉しそうに言うと、体ごと私の方に向き直りおもむろに手を繋いできた。
「あっ、ちょっとやめてよっ。恥ずかしいよっ。きっと、ただでさえあなたは社員の方達の注目の的なんだから......」
「それならむしろ好都合だ。いずれにしろ結婚したら、優花は社長夫人として表に出ることも多くなるんだから、注目を浴びることに今から慣れておかないとね」
それ以降、スマホ越しの男性とジークとの英語でのやりとりは、低スペックの私なんぞには到底理解できるはずもなかった。
一人取り残された私は、とりあえず、この明らかに大企業な社内をぐるっと見渡して見る。
ビルを構築する柱と柱の間に、はめ込まれた巨大なガラスは全て綺麗に磨かれて真水と見紛う透明な物体を経て太陽光が真っ直ぐに通過している。
その日の光が行き着く先は、これまた内部が完全に透過した地上から縦に長い長いシースルーエレベーター。
エレベーターの終着地は、きっと社長室で、そこにはジークのお父さんが.......。
「上がって来いだってさ」
いつの間にか電話を終えていたジークが、まるでコンビニにでも誘うかのような軽いテンションで言った。
反対に私は緊張のあまり、あたかも関節が硬くなってしまったかのように膝をまっすぐに伸ばした奇妙な歩き方をしながら、悠々と前を進むジークの背中を追いかけた。
フロアの中程、社長室へと続くシースルーエレベーターまで後少しというころで不意にジークが立ち止まり私の方を振り返った。
「あのさ、本当に緊張しなくていいからね。こういう会社やってるからって、うちの家族みんなフランクだから」
「きっ、緊張しなくていいって言われて、緊張しない人なんかいないよっ!こんな大きな会社を経営されているのもそうだけど、それ以前に少なくとも私、あなたの婚約者としてご両親にお会いするんだから.......」
「そう、オレのフィアンセとしてね」
ジークは嬉しそうに言うと、体ごと私の方に向き直りおもむろに手を繋いできた。
「あっ、ちょっとやめてよっ。恥ずかしいよっ。きっと、ただでさえあなたは社員の方達の注目の的なんだから......」
「それならむしろ好都合だ。いずれにしろ結婚したら、優花は社長夫人として表に出ることも多くなるんだから、注目を浴びることに今から慣れておかないとね」


