真心の愛を君に......。 〜 運命の恋は結婚相談所で ~

「エンゲージリング!?」

思わず声が上擦った。

「そうだよ。何か変?当然だろ」

そうだよね......。

私、ジークと結婚するんだもんね......。

何だろう、この疲労感。

ジークに気付かれてないといいな。

一瞬にして、それまで和やかだった車内の雰囲気が変わった気がした。

もとより寒いニューヨークの冬。カップルなら手に手を取り合って温め合うのが微笑ましいはずが、私の至らない発言のせいで冷水を注いでしまった。

そんな凍てつく空気を変えようとジークが話題を変えた。

「もう、すぐだよ。あ、見てごらん、会社が見えてきた」

私はジークに言われた通りに視線を向けた。

すると、視線の先に現れたのは、

「......えっ!え、ええ〜っ!!」

予想以上、いや、予想外!!に高い高層ビルの光り輝くガラス窓。車内からグーッと覗き込めば清掃員の人がゴンドラに乗って上階の窓を磨いている。

「どうしたの?」

「いや、清掃員の人が窓磨いてる......じゃなくて、こっ、ここがジークのお父さんの会社なの!?」

「そうだよ」

そうだよって......。

平然とした態度で、すごいことを返され、ただただ感服するばかりの私をよそに、ジークは当たり前のように車を進め、当たり前のように警備員さんに挨拶をして、気がついたら私も一緒にビルの中へ潜入成功。

「父さんに連絡するね〜」

ヒーッ!そんなにゆるく言わないで〜っ!

「あの.....っ、お父さん社長さんでしょ?お忙しいんじゃ......」

「そうだよ。社長だよ。忙しいことに変わりはないけど、だからこそ昼間しか時間が許されないんだ。夜は会食やなんだかんだで......」

ブツブツ言いながらスマホをいじり続けるジークを見守ること数秒、それまでとても流暢な日本語で私をエスコートしてきた彼の言葉が母国語に切り替わった。

「Dad?」