昼、夜そして今日は朝のニューヨークを体感する日。
朝食を終えた私達は、早々にホテルを後にして、まだ太陽が高く澄んだ空気が町中を駆け巡る午前中に行動を開始した。
「本当は地下鉄にも乗せたいんだよ。昔と違って随分と治安が良くなってるし。いや、でも、心配だな。優花は可愛いから、変な男にナンパされたりしたら嫌だ」
というわけで、ナンパ防止という名目で今日もジークと手を繋ぎ、彼のお父さんが経営する会社へと向かう。
と言っても、車で向かってるわけだから、ナンパの心配なんか全く必要ないんだけど......。
ジークは私と繋ぎながら片手でハンドルを握り、上機嫌で車内から望むマンハッタンの街を案内してくれた。
「あ、ほらあそこ。あそこが本店だよ」
高級ブティックが立ち並ぶ5番街。ファッショナブルなニューヨークを一際格上げする老舗ジュエリーショップの本店は今日も盛況なようで、観光客と思しき人たちが列をなしていた。
その列を何となしに目で追うと、またしてもいつか見た見覚えのある男性の姿が......。
ーーちょっと、違うってばっ!あの人は。
そう。ニューヨークを歩くアジア人のビジネスマンは、みんな同じに見えるだけ。
あの人は、広務さんじゃない......。
でも、もしかして......。だって、彼は私にあのブランドのエンゲージリングをくれた。
いつかの日、彼はああいう風にあの店の前を通って......。
置き去りにしたはずの記憶が蘇る。
私は自分への戒めとして、声を出す代わりにキュッと唇を結んでフロントガラスの向こうを見た。
「......か、ねぇ、優花聞いてる?」
「......え?あっ、ごめん何?」
「あのブランド好きなの?」
「いや、あの......別に」
「そう? さっきから話しかけてるのに、優花あの店ばっかり、ずっと見てるから。でもいいんだ。オレ的には大ヒントになったから」
「何の......?」
「君に贈るエンゲージリング」
朝食を終えた私達は、早々にホテルを後にして、まだ太陽が高く澄んだ空気が町中を駆け巡る午前中に行動を開始した。
「本当は地下鉄にも乗せたいんだよ。昔と違って随分と治安が良くなってるし。いや、でも、心配だな。優花は可愛いから、変な男にナンパされたりしたら嫌だ」
というわけで、ナンパ防止という名目で今日もジークと手を繋ぎ、彼のお父さんが経営する会社へと向かう。
と言っても、車で向かってるわけだから、ナンパの心配なんか全く必要ないんだけど......。
ジークは私と繋ぎながら片手でハンドルを握り、上機嫌で車内から望むマンハッタンの街を案内してくれた。
「あ、ほらあそこ。あそこが本店だよ」
高級ブティックが立ち並ぶ5番街。ファッショナブルなニューヨークを一際格上げする老舗ジュエリーショップの本店は今日も盛況なようで、観光客と思しき人たちが列をなしていた。
その列を何となしに目で追うと、またしてもいつか見た見覚えのある男性の姿が......。
ーーちょっと、違うってばっ!あの人は。
そう。ニューヨークを歩くアジア人のビジネスマンは、みんな同じに見えるだけ。
あの人は、広務さんじゃない......。
でも、もしかして......。だって、彼は私にあのブランドのエンゲージリングをくれた。
いつかの日、彼はああいう風にあの店の前を通って......。
置き去りにしたはずの記憶が蘇る。
私は自分への戒めとして、声を出す代わりにキュッと唇を結んでフロントガラスの向こうを見た。
「......か、ねぇ、優花聞いてる?」
「......え?あっ、ごめん何?」
「あのブランド好きなの?」
「いや、あの......別に」
「そう? さっきから話しかけてるのに、優花あの店ばっかり、ずっと見てるから。でもいいんだ。オレ的には大ヒントになったから」
「何の......?」
「君に贈るエンゲージリング」


