真心の愛を君に......。 〜 運命の恋は結婚相談所で ~

五つ星ホテルの高層階ーー。満点の星空を逆さまにしたような眩いネオンの海が美しい。

昼間は、あんなにも騒がしくて雑然としていた街並が嘘のように、ニューヨークの夜は粛々としていて、古き良き嗜みを培った紳士淑女が静かに恋を語り合うのに相応しい世界。

「......やっと落ち着いたね。優花にとっては初めてのニューヨーク。今日は色々と歩き回って疲れただろう?」

あまりにも綺麗に磨かれていて一瞬ガラスが、はめ込まれていないと錯覚しそうな大きな窓から色とりどりの宝石にも似た夜景を見下ろしていると、後ろ背にゆったりとしたジークの声が聞こえた。

私は、その声を背中の大きく開いたイブニングドレスから晒された素肌で受け取りつつ、ジークの方を振り返った。

すると、そこには上質な黒の革張りのボリュームのあるソファに深く背を持たれて足を組み、紳士的な落ち着きを身にまとったジークの姿があった。

「ニューヨークって不思議な街だね。昼間はいかにも大都会って感じで、建物も人も車もすごく多くて目が回りそうになるのに、夜になると、まるで水を打ったかのように静かで......」

「優花、それはここがラグジュアリーなホテルの一室だからだよ。外界から完全に遮断されたプライベート空間で、こんなに大きな窓があっても、地上とは随分と離れてるから外から見上げてもオレたち二人の姿は豆粒にすら見えないよ。.......だから、人目を気にせず優花と何でもできる」

「何でもって、何が......?」

決してジークを挑発したいわけじゃない。

でもこの台詞じゃ、むしろ私から彼を求めてるみたいに聞こえてしまう。

「無防備な背中......。まるでオレに何でもしてほしいって言ってるみたい」

「......っ、そんなことっ」

この部屋限定で展開されるニューヨークの夜の静寂と満点の夜景は、やはり男女が恋を紡ぐ為に用意された危なげなオプションだったみたい。

私がどんなに身を躱(かわ)そうとしても、特別な夜のジークの追撃は決してそれを許さない。

彼の身体は、それまでソファに深く沈んでいたのに、あれよあれよと言う間に、いつものスラリとした長身の立ち姿で私の息遣いが感じられる距離まで迫っていた。

「ベッドへ運ぶよ」