真心の愛を君に......。 〜 運命の恋は結婚相談所で ~

そんなこと言われたって.......。

惰性。私がジークと結婚するのは、広務さんと別れて寂しくて、自分を甘やかすために拠り所を求めた結果。

ジークと私との関係の背後には常に私から広務さんへの独占欲と執着心という火種があった。

その二つは一見、愛情と似ているけれど、もととなっているのは自己愛と劣等感でしかない。

ずるい気持ちを内包させたまま、私はジークと指先を絡ませながら堂々と真昼間の大都市を闊歩し続けた。

この光景を、さっき交差点で見かけた広務さんと思しき男性が目撃したらどう思うんだろう.......。

あの男性は本当に広務さんだったんだろうか?

信号待ちの僅かな時間の間だったし、遠目に見ただけだから細部までは見えなかった。ましてや、顔形なんて確認する余裕はなかった。

でも.......、日本で数ヶ月の間、私の最愛の恋人だったあの男(ひと)と、今日ニューヨークでついさっき見かけた男性は雰囲気がとてもよく似ていた。

きっと外国を歩く日本人のビジネスマンは皆、同じように見えるのかもしれない。

それでも、私はこの広い異国の都市で束の間見かけただけの人を、あの男(ひと)だと信じたい。

もう、この先広務さんと私が繋がる事など無いというのに.......。

「すごく楽しいな。こうして優花と手を繋いで生まれた街を歩くのは」

「ニューヨークは、いつもこんなに賑やかなの? それとも、年末だから皆仕事が休みとか、観光で来てる人もたくさんいるのかな」

なんとなく応えになっているような言葉を返しつつ、私はさりげなくジークからのラブコールをかわした。

そうゆう風にしたのは、現状のジークのやたらに陽気な振る舞いは訝しげな私には、どうにも歯切れの悪いモヤモヤとした執念にしか見え無いから。

そういうジークと、ジーク以外の男(ひと)を想う女......。

私達は、こんなにも晴れやかで、賑やかで、開放的な街とは寸分も似つかわしく無い訳ありのカップル。

それでも、ジークと私は相変わらず、ほの熱いお互いの指先を絡ませながら、今日宿泊するホテルへと向かっていた。