真心の愛を君に......。 〜 運命の恋は結婚相談所で ~

航路について深く印象に残っていることはない。

ただ、ニューヨークに着くまでの間で彼と交わしていた会話と、胸の内で波打っていた感情の落差は高度10000メートルに匹敵するほど大きく、油断すると体から本心が飛び出してしまいそうだった。

地上が近づくにつれて、ぐらぐらと揺れながら窓の外に広がる群青色の海の彼方に夥しい建造物を築く人口の浮島を見つけたとき、私はぐっと気を引き締めて、これから迎え撃つべく未来に思いを馳せた。

しかし、その待ち受ける未来とは今隣にいるジークと歩む道ではなく、眼下に広がった広大な街に今も居るかもしれない、未だに忘れられない、あの男(ひと)とのことだった。

広務さん、今も忙しなくニューヨークの街を飛び回ってる?

仕事は順調?

私の方はね、仕事辞めるの。

私、結婚するの。

広務さん以外の男(ひと)と......。

「揺れるからしっかり掴まって」

隣に座るジークの声で、すぐさま現実に引き戻された。

やがて、高度を下げた飛行機は滑走路へ車輪を着けると、徐々に速度を緩めながら走り、そのうち機体を停めた。

「あっという間だ。優花と居ると時間が経つのが早いよ」

「そう?」

もっと何か返す言葉があるはず。自分のあまりにも、そっけない対応に罪悪感を覚えながら後に続く言葉を考えた。

「ladies and gentleman......」

......よかった。どうにか間が持った。

沈黙が続きそうな場面にタイミングよく機内アナウンスが流れて、気まずくなりそうな空気を避けることができた。

全編英語の機内アナウンスが流れ終わると、乗客はそれぞれに降機の準備を始めた。

「よし、オレ達も行こう」