途端に、ズキンと鈍い痛みが胸を抉った。

優花へ贈ったエンゲージリングを買った店ーー。

華々しい外観とショーウィンドウを彩る洗練されたジュエリー。

スポットライトを浴びて一際輝く、そのリングこそ、当時と何ら変わらない伝統と格式高い、このブランドを代表するデザインのエンゲージリング。

最初から決めていた。彼女へプロポーズするときは、この指輪を贈ると。

あの日の彼女の笑顔が忘れられない.......。

"広務さん、ありがとう”

この言葉は嘘だったのか?

だとしたら、なぜ君は俺からのエンゲージリングを受け取ってくれたんだ?

俺は暫くの間、ショーウィンドウに鎮座する指輪に問いかけていた。

こんな回想は無意味なものだと分かっていながらも、どうしても彼女への想いが溢れ出して止められなかった......。

しかし、この場所で永久に感傷に浸り続けるわけにはいかない。

横目に入る、ジュエリーショップの隣に構えられた社屋に促されて、俺は、やむを得ずショーウィンドウを離れた。

ジュエリーショップに隣接した取引先の会社は、主にロシアや南アフリカからダイヤモンドを輸入して加工し、世界各国の宝石商に販売している卸売業者だ。

中央ロビーには自社で加工した200カラットのダイヤモンドが展示してあり、常に来客の度肝を抜いている。

清水のように透明な石の内部に七色の光を蓄えた、世にも美しい姿に魅了されるのも束の間、中央ロビー奥のエレベーターが開き、そこへ視線を向けると中から現れたのは、

「お待たせ致しました、成瀬部長。物流課の日野です」