真心の愛を君に......。 〜 運命の恋は結婚相談所で ~

彼は自分の対面に座り朗らかに笑う女性へ、とても優しくて柔らかな笑顔を返していた。

その笑みは、まさしく彼がいつも私に向けてくれる恋人の笑顔そのものだった。

瞼に焼きついた彼の愛おしい笑顔に今まで感じたことのない寂しさを覚えながら、私は独り暗い路地裏を歩き続けた。

重荷を背負っているように背中をすぼめて自分の足が右左と動いているのを見続けていると、やがて風を巻き上げるような車の走行音が聞こえてきた。

ようやく、大通りに出られるーー。

裏通りと大通りの分岐点の十字路を右に行けば、彼がいるカフェにたどり着く。

ーー反対に左側の道には......。

歩みを進めているうちに少しずつ開けてきた街並みを眺めながら、私は目指す場所とは別の方角に目を向けた。

黄色い縁取りに赤い文字で”薬”。大手ドラッグストアチェーン店の看板が目に入った。

私、これから一体何をしようとしてるんだろう......。 

タクシーで通り過ぎた道を戻って、カフェのガラス窓を除いて、彼と見知らぬ女性の密会現場を目撃する。そして、私は黙って独りで傷ついて、この見慣れない夜の街で途方にくれる。

せめて私に、彼を問いただせる資格があったのなら幾分かは慰められたのに。

私はジークとの一夜の過ちで十字架を背負った。だから、広務さんの行動を問いただす権利はない......。

広務さんが果てしなく遠い人に感じる。

反対にジークの存在が急速に近づいてくる。

私は一体、これからどこへ向かえばいいの......?