真心の愛を君に......。 〜 運命の恋は結婚相談所で ~

ドライバーは、それまで大人しく乗車していた私が突然大きな声をあげた事に、とても驚いた様子で、一瞬私の方を見る風に首を横へ動かした。

「えっ!! お客さん、無理ですよっ! この車の流れじゃあ、すぐに路上へ横付けするのはっ」

「じゃあ......っ、次の信号を左折して、裏通りで降ろしてくださいっ」

私は本来向かうはずだった彼のマンションから急遽ドライバーに進路変更を頼み、大通りを抜けて個人経営の商店や小さなスナックが点々と並ぶ裏通りでタクシーを降りた。

古びた店の看板が”ぼうっ”と浮かぶ裏通りの古めかしい佇まいと暗さは、決して夜の帳のせいだけではない。

この路地裏で酒を煽る人々が夜な夜な持ち込む哀愁が、この通りには染みついている。

今の私も、このままここに留まっていれば、この土地の鬱積とした空気に足を取られてしまう......。

私は身震いしながら肩をすくめ、バッグの持ち手をぎゅっと掴んで大通りを目指して歩き出した。

車で駆け抜けるのとはわけが違う。思ったよりも裏通りから大通りに出るまでには距離があり、もう10分近く歩いているはずなのに、なかなか高いビルや煌びやかなネオンが目の前に浮かんでこない。

この先、歩き疲れて足が棒になっても、もう永遠に私は光の射す方へ出られないのかもしれない......。

怖い。

ーー真実を知るのが怖い。

私が今こうして、この暗い路地裏から大通りを目指して歩いている理由。それは、真相を確かめるため。

先ほどガラス越しに目撃したカップル。見知らぬ女性が朗らかな笑顔を向けていた男性ーーあれは間違いなく、広務さんだった......。