真心の愛を君に......。 〜 運命の恋は結婚相談所で ~

分厚いガラス扉の外に広がった晩秋を彩る燃えるような夕焼けは、数日前に遭遇した情熱的なシーンと見事にシンクロして、過ぎ去った甘い時間を思い出させた。

今私が見ている夕焼けは、先週広務さんを迎えた時と同じくらいに赤い。

あの時、彼は出張先から直接私に会いに来てくれて、両手いっぱいの荷物を道に放って全身で私を受け止めてくれた。

そして、今日も彼は私に歩み寄ってくれた......。

独りで妊娠に向き合う。そう思っていても、お腹の子の父親が彼でなくてもーー私が信じたいのは広務さんで、縋りたいのも彼だった。

今朝、自分からあんなに彼を突っぱねておきながら、”もしかして、連絡が来ているかもーー?”と、スマホに手を伸ばしてしまったのは、あの時の二人を思い出させる、この夕焼けのせいかもしれない。

僅かに高鳴る鼓動を抱えながら、スマホの画面に目を当てた私を待っていたのはーー、

甘い記憶は、もう過去のものだという冷たい現実だった。

分かっていた。覚悟していた。そのはずなのに......、

私は絶望する心に上手く嘘を付けなかった。

力強かった足取りは腱を切られたように、一歩も動かす事ができなくなり、手のひらは音信の途絶えたスマホを乗せたまま硬直していた。項垂れた自分の首を支えるのも辛い。

これが、孤独の苦しさなんだ......。

改めて噛み締めた現実に瞼が濡れる。

私は涙がこぼれ落ちないようにと、ぎゅっと目を瞑り、そして開いた。

すると、あたかも場面が変わったかのように、スマホのランプが一瞬小さく光った。

もしかして......!!

未練がましいと思う。卑しいとさえ思う。

私は自分を罵りながら指先を震わせて、真っ暗な画面を夢中でスクロールした。

画面が明るくなり、待ち受けに表示された文字に私は再び瞼を濡らすことになった。

ーー5時10分、着信あり。

”成瀬広務”