真心の愛を君に......。 〜 運命の恋は結婚相談所で ~

広務さんの傍にいると、いつも私の鼻腔をくすぐり媚薬のように胸のときめきを増幅させるマリンシトラスの香りは昨晩彼と互いに、あられもない姿で向き合った蜜月のベッドにも深く馴染んでいた。

ベッドの香りを身に纏うほど親密に繋がった昨夜、私は彼に抱かれることに夢中だった。

広務さんの腕の中はーー神聖だった。過ちや、不安や、孤独、悲しみといった私が最も恐れている感情が存在せずに、ただ温かくて優しかった。

彼の腕の中で、どこまでも純粋になった私は怖いことは全て忘れて、ひたすら彼だけを求めることに没頭していた。それなのに......。

「好きな男(ひと)の匂いが移るって、なんかエッチ〜ッ!」

お互いに恋愛が順調だと信じてやまない実加は、彼女なりのサービス精神で遠慮なくツッコミみを入れてくる。

無下に出来ない私は精一杯の作り笑いで応えた。

実加のツッコミもベッドの残り香も嬉しいはずの恋は数奇な運命をたどり始め、今私の胸の内を支配している感情は、私のこれからの未来には再び彼の腕に抱きしめられる夜は、あるのだろうか?ということだ。

"抱きしめられる"

そういえば、あの夜、予定では生理日と重なっていたーー。

......あの時点で四日遅れていた。

ここ数ヶ月こんなに遅れたことって、ない。

普通じゃない。不測の事態が起こっているーー。

”妊娠”

......広務さんの子じゃない。