彼は悪くない。
悪いのは私で、彼に謝らせたのも私......。
そう思ったら、咄嗟に口をついていた。
だけど、言葉が続かない。
結局、私はどこまでも卑怯な女。
だって、言葉が続かない代わりに、涙が溢れてくる。
これじゃあ、もっと広務さんを惑わせて、苦しめる。
「......ごめんっ、なさ......っ、い......っ」
「大丈夫。大丈夫。よしよし」
幼い子のように、しゃくり上げながら涙を流す私を、彼はハザードランプを点滅させて停車している愛車の中で、まるであやすように頭を撫でてくれた。
温かくて大きな手の平を髪に、ゆっくりと滑らせて頭を撫でてくれた彼は、今度は手の平を後頭部に回して、そのまま静かに自分の胸元へと運び、ぎゅっと私を抱きしめてくれた。
「俺、今日休みだし。優花も会社休んじゃえば?」
「えっ?」
仕事熱心で、人に迷惑をかけるのが嫌いな彼らしくない発言に驚いた私は、マリンシトラスが香る腕の中から、ひょっこりと顔を出して彼を見上げた。
「なんてね......。びっくりして、涙止まった?」
冗談と言いながらも広務さんからは、もの哀しい雰囲気が漂っていて、初めこそ私は涙が退いたキョトンとした目で彼を見上げていたけれど次第に切なくなって、今はただ好きな男(ひと)をこの目に焼き付けたい一心で彼を見つめて続けている。
「タイミング悪いな。一緒の休みなら、このまま二人でどこか遠い所へ行けたのに......」
憂を含んだ眼差しに私を映しながら、彼は続けてこう言った。
「本当、ツイてないな俺。こんな時に、今すぐ優花を抱きたくなるなんて......」
悪いのは私で、彼に謝らせたのも私......。
そう思ったら、咄嗟に口をついていた。
だけど、言葉が続かない。
結局、私はどこまでも卑怯な女。
だって、言葉が続かない代わりに、涙が溢れてくる。
これじゃあ、もっと広務さんを惑わせて、苦しめる。
「......ごめんっ、なさ......っ、い......っ」
「大丈夫。大丈夫。よしよし」
幼い子のように、しゃくり上げながら涙を流す私を、彼はハザードランプを点滅させて停車している愛車の中で、まるであやすように頭を撫でてくれた。
温かくて大きな手の平を髪に、ゆっくりと滑らせて頭を撫でてくれた彼は、今度は手の平を後頭部に回して、そのまま静かに自分の胸元へと運び、ぎゅっと私を抱きしめてくれた。
「俺、今日休みだし。優花も会社休んじゃえば?」
「えっ?」
仕事熱心で、人に迷惑をかけるのが嫌いな彼らしくない発言に驚いた私は、マリンシトラスが香る腕の中から、ひょっこりと顔を出して彼を見上げた。
「なんてね......。びっくりして、涙止まった?」
冗談と言いながらも広務さんからは、もの哀しい雰囲気が漂っていて、初めこそ私は涙が退いたキョトンとした目で彼を見上げていたけれど次第に切なくなって、今はただ好きな男(ひと)をこの目に焼き付けたい一心で彼を見つめて続けている。
「タイミング悪いな。一緒の休みなら、このまま二人でどこか遠い所へ行けたのに......」
憂を含んだ眼差しに私を映しながら、彼は続けてこう言った。
「本当、ツイてないな俺。こんな時に、今すぐ優花を抱きたくなるなんて......」


