真心の愛を君に......。 〜 運命の恋は結婚相談所で ~

”ズキン”と胸を貫く。

それは、ジークへの闘争心ゆえに、私の存在が視界に入らない広務さんの胸もを執拗に。

”広務さん......”

私は語りかけるように、心の中で彼の名前を小さく呼んだ。

心の中で彼の名前を呼びながら、私はジークが何のためらいもなく明かした残酷な真実に心臓を一突されて、まるで後ろ背に刃で貫かれた衝撃を味わうかの如く足元に、のしかかった重力に引かれ、かかとを不甲斐なく後退りさせた。

朝のエントランスに”コツン”と響いたハイヒールの細いかかとの音は、淀んだ惨状の沈黙を破った。

その瞬間。未だ最愛の男(ひと)の視線が私を捉えた。

「優花......っ!」

広務さんは目を大きく見開いた驚愕のまなこに、私を映しながら一歩足を踏み出した。

私は彼が私のもとへ歩んで来る様子から目を離せないでいた。それなのに、どうしてか、広務さんが今どういう表情をしているのか識別できない。

やがて、錯乱した心臓が勝手にドクドクと音をたて始めた。

怖い。

......彼に何と言われるんだろう?

ううん。そんなことよりも、

広務さんを傷つけた。

広務さんが傷ついているーー。

苦しい。

広務さんの胸の内を思うと、私は胸が張り裂けそうなくらいに苦しい。

私は彼を傷つけた加害者。そして、

ジークは共犯者ーー。

違う。

結局、全部私のせい。

私が全部終わらせてしまったんだ。

最愛の男(ひと)を傷つけるという、最悪の形でーー。

もう、直ぐ。

彼が私の目の前に来て口を開く。

ーー広務さんが口を開いた時、彼と私は終わる......!

私は、ぶつけようのない悔しさを握り潰すように、誰にも気がつかれないくらい静かに、だけれども、ギュゥッと、爪が手のひらの凹みに食い込むくらい強く拳を丸めた。

そうすると、どうだろう。まるで誰かが私の手を、あたためてくれているかのように温かい......。

不思議な熱感に少しばかり、平静を取り戻した私は、ようやく目の前の景色に意識を向けることができた。

開けた視界に真っ先に飛び込んできたのは、いつの間にか私のもとへと辿り着いていた広務さんの姿だった。

そして、分かった。私の手が、こんなにも温かいのは今、広務さんが私の手をしっかりと包み込んでくれているからだ......。

「すぐ迎えに行くって言ったのに......、遅くなってごめんね。行こう」