奇妙な手紙を貰ってから1週間が経ち、
俺は手紙の事を忘れかけていた。


燐(やっべ、練習履き教室に置きっぱだ。)


野球部の部室で着替え終わり、出ようとした直後ローファーしかない事に気づく。

燐「はぁ……雄太!ちょっと忘れモン取りに行ってくる!先始めてて。」

雄「ったく、何やってんだよ、『新副主将』??」

燐「っせぇな、新主将!!!!」

橘 雄太。
俺の中学からの野球仲間。趣味とか色々話が合うし居て楽。成績優秀でまとめ上手。きっとコイツが主将になるんだろうなって思ってた。

雄「5秒で戻ってこいよ~」

燐「鬼か!?」



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燐「ったく…無駄に遠回りしちまった…」


監督はまだ教室に残っているかもしれないと思い、2年C組の教室を回避するためにわざわざ3階の1年の教室から2階の自分の教室まで遠回りをした。


燐「見つかると厄介だしなあ…」

思わず、燐は苦笑する。
去年の秋も練習履きを忘れ、歩いてとりに行ったところを顧問に見つかりグランドを皆が練習終わるまで走らされた。あんな事はもうしたくない……。

燐「やっと着いたか。」

【2年A組】

もう、放課後だ。誰もいないだろうと思い教室のドアを勢いよく開けた。


ガラッ



?「えへへ~今日も一日疲れたねぇ~。明日はガーベラ持ってくるから仲間が増えるね~…うふふ、良かったね!」

ん?あれは……

燐「望月??」

瑠「…!?も、望月くん!?」

燐「よ、よお?」

瑠「お、お疲れ様です…」

挙動不審。まさに今の望月にぴったりだ。明らかにオドオドしてる。
……ん?俺、望月にしなきゃいけない事があったような…

燐「あ…手紙…」

瑠「…読んで、くれたんだ…」

燐「!?」




燐は驚きを隠せなかった。

手紙を"読んだ"なんて一言も言ってはない。
むしろ今から、言おうとしていたところだった。
なのに、彼女は読んだと理解し涙を浮かべている。

燐「望月?とりあえず、落ち着け?な?」

瑠「ごめ、なさい…嬉しくて…望月くんが読んでくれたことが…」


燐は、読んだだけで書いてあったことを実行していない。
話しかけてもいないし、それに返事すら書いてない。
むしろ、望月瑠璃は変な奴という認識をし始めたくらいだ。


燐「あの、さ。望月。手紙の事なんだけど…どういう意味だ??」


瑠「…望月くん、これからいう事を信じてくれますか?」


返ってきたのは答えになってない返答。


遠くから聞こえる、野球部の掛け声。
トランペットのチューニングの音。
皆が必死になにかに取り組む時間になったことを伝えてくれた。

俺は、遅刻者としてまた顧問に走らされるだろうな、なんて目の前の彼女の話を流し半分で聞いていた。