燐「…は?」

高校2年、秋。
私立、星ヶ丘学園の予鈴のチャイムが鳴る下駄箱で、望月燐は阿呆な声をあげてしまった。

夏休みも終わり、今日からまた当たり前の毎日が始まる。
野球漬けの夏休みが終わり、勉学に勤しむ事になる憂鬱感と気だるさはあるが別に、学校に行くのは嫌いではない。
ウチの学園は、毎年恒例で後期式の日に新主将が発表される。まあ、大体予想はついてたりするけど、それがしきたりだ。だから俺は、野球部の主将は誰になるのか、そんな事を考えながら学校に向かっていた。



去年も体験した、後期の始まりの日。
今年も後期式は、学園長の長い話で始まるんだろう、めんどくさいなんて考えてた。


そう、つまりは去年と似たような事を考えながら下駄箱を開けたわけである。
だから開けたらびっくりするに決まってる。眠気なんてどっか吹っ飛んでいった。
下駄箱に手紙があるだけでもドキドキするのに、差出人は、あの「望月瑠璃」だ。

望月瑠璃といえば、学校中が噂するくらいの美人。「高嶺の花」「星学のマドンナ」他にも噂は沢山ある。入学して二日で10人に告白されただの、取り巻きがいるだの。
正直、噂が一人歩きしてるだけなのではと俺は思う。確かに彼女は美人だけど。
俺はそんな高嶺の花と苗字が同じなだけ、ただそれだけの関係。



燐「どういう意味だ、これ…」


そして、冒頭に戻る。
下駄箱には、望月瑠璃からの手紙が入っていた。
しかし、内容が超がつくほど一文目からヘビーだ。




『拝啓、望月燐様。
もし、アナタの恋人が突然倒れたらアナタはどうしますか?』


燐「倒れたらってゆーか、そもそも彼女いねぇよ、俺…」


続きを読む。


『…なんてヘビーな内容なんだこいつ!しかも、初めての手紙でなんてこと聞いてくんだ!とか思ってるのかな?驚いてる姿が目に浮かぶなあ~。
あ、一応知ってると思うけど自己紹介ね!
私は望月瑠璃です!…って、クラスも同じだからわかるか…。先生とか皆に「W望月」ってよく言われるよね!分かってんなら先生も「おい、望月!」とか言わないでほしいよね〜。』


燐「…すげぇ、分かる。何回も恥ずかしい思いをした…この約一年半…」

何回、望月さんと返事をするタイミングが被ったか分からない。

燐「って、それでえーっと…?」



あ!話が戻ります!!(笑)

もし、この手紙を読んでくれたらその日のうちに私に話しかけてください。
そしたら、なんで手紙を出したのか伝えます望月瑠璃より。』


燐「…話しかけたらって……無理だろ…」

相手はあの有名な高嶺の花、望月瑠璃だ。
話しかけでもしてみろ、きっと取り巻きだのなんだの言われるに決まってる。

面倒事はあまり好きじゃない。








……今でも思う。もし、この時面倒くさがらずに、望月に……瑠璃にさっさと話しかけていればもっとまともな未来が待っていたかもしれない、と。