お得意の笑顔に、目の前の彼女は頬を染める。俺はその間、朝比奈は何をしているだろうと考えていた。


そして彼女と一緒に最寄りの駅に着き、改札を出ようとした時、目に入ったのが朝比奈であった。朝比奈もこちらに気づいたので、文句でも言ってやろうとそこで待ってろと伝え、彼女をタクシー乗り場まで送る。


自分はまだ仕事が残っているからと言って、その場を引き返し、朝比奈がいる場所に戻ると彼女は大人しく待っていた。

近くまできて、目に入る朝比奈の白い首筋に残ったキスマーク。それを見た瞬間、俺は無性に腹が立った。


なんだよ、これ。


『こんな痕付けて、あの男に抱かれたのか』


ああ、なんだろう。

少し冷えた夜の風は大して飲んでいないアルコールの熱さえ冷ましてくれない。いや、この熱は恐らく別のものだろう。

朝比奈があの男とよろしくやっていたと考えただけで言い難い気持ちになった。


朝比奈とアイツが。ふつふつとイライラが溜まっていく。

別に自分の女でもあるまいし、なにをそんなに苛立っているのか分からなかった。