「相変わらず隠すのが下手くそだな」

「そう思うなら聞かないで下さい」

むっと口を尖らせながら一ノ瀬さんを睨むと、そこにはにやりと勝ち誇った顔を向ける彼がいた。


「ワザと聞いたんだよ」

「タチ悪いです」

「嫌いじゃねーだろ?」


この人のこの自信はどこから来るものなんだろう。そう思うけれど、一番悔しいのは、一ノ瀬さんのその顔を見て、胸が音を立ててしまったことだ。


「付き合っていたんです、大学時代に……」


もう隠したところで意味がないと判断した私は素直に白状することにした。

「初めてしっかり恋愛したなって思えた相手だったんです。だから今でも少し気にしてるってだけの話ですよ」

「へぇ、」

一ノ瀬さんの少し低い声が耳元に落ちてくる。少しの沈黙。なんとなく居心地が悪くなって彼を見ると、ぱちりと目が合った。


まっすぐ私を捉える瞳に、視線を逃すことができずに息をのむ。すると彼は言った。


「なんかその話、いい気しねーな」

「な、なんですかそれ!なんで一ノ瀬さんがそんなこと思うんですか」


意味わからない。
どうせまた私で遊んでるに決まってる。


「さあ?」

"さあ"って……。