今日もまた一ノ瀬さんはいつもと変わらず、女性からの視線を奪っていた。



「進藤さん、この間提出してくれた企画書だけどよく出来てたよ」

「本当ですかぁ!ありがとうございます」

「欲を言うならここ、女性の持ち物をリストに加えるだけでもっと良くなる」

「本当だ、全然違う……ありがとうございます」


お礼を言った進藤さんに対して、柔らかな笑顔を浮かべると、すぐ去っていく一ノ瀬さん。

彼がオフィスから出て行った後、私の隣のデスクに戻って来た進藤さんは甘いため息をついた。


「一ノ瀬さんって、いっつもやったことに対して批判しないんですよ……」


「はあ、」


突然独り言のように話を始めた進藤さんに視線だけ移して適当な相槌を打つ。


「でもちゃんと足りないところは指摘してくれるんです」

「うん」

「完璧だと思いませんか」

「はぁ、」


ぎゅぅうとファイルを抱きしめて目をキラキラさせる進藤さん。


「あんな人が旦那さんだったら、きっと家事とか失敗しても、でも俺はそんなキミが好きだよって言ってくれるんですよ」


……絶対に言わないと思う。

むしろ、こんなのもまともに出来ねぇのかよと吐き捨てるだろう。