反応が気になる。チラっと一ノ瀬さんを盗み見て様子を伺っていると、彼はふわりと笑った。



「ん、美味い」


見たことのない柔らかな笑顔にドキっと強く心臓が胸を打った。

まさかそんな反応されると思わなくてぱちぱち瞬きをして彼を見ていると「なんだ」とぶっきら棒に聞いて来る。


「いや、30点とか言いそうだなって思って……」

「美味いもんは美味いつーだろ」

「っ、」


その言葉にかあっと顔に熱が集まる。


普段こんな風に褒めないくせに。


気を抜くとすぐにやられる自分が嫌になる。相手はあの悪魔。これくらいなんでもないと自分に言い聞かせるけれど、緩む口元を隠すことしか出来なかった。


「だ、だいたい料理作ってくれる人、いないんですか?冷蔵庫に何もないじゃないですか」

「あー……まぁ料理はしねぇし、女は家に呼ばねぇからな」


一ノ瀬さんは味噌汁をすすりながら、箸で器用にワカメをすくうとパクッと口に入れる。そして平然と言った。


「めんどくせぇだろ?家呼ぶと拗れた時、押し掛けてくるから」


一ノ瀬さんが今まで関係を持って来た女子を気の毒に思いつつ、こんなに裏表があるのに周りにバレないのは逆にすごいなと思った。