私に恋した誘拐犯

「君がお母さんに、どんなことをされてきたのか知ってる。…だからきたんや」



赤信号で止まった車は、

より静けさを演出した。



「…あなたは、だれ?」



素朴な疑問。



「名前は、ハギ、年齢は、20歳くらいにしとこか、うんうん」


「ハギって、本名?」


「ちゃうわ、本名は、」




本名は───…?





「あ、信号変わった」

アクセルをふむ、ハギ。


話はそこで終わった。




ついて行くのも悪くないかも、

なんて思っている私は末期で。


でも、きっとお母さんに、私は必要ないから。


それに、今日は帰っちゃダメな日だし。




うーん…