私に恋した誘拐犯

車のドアを開けて、


少し驚いた顔で、


「逃げへんかったんや」って。



手に持ったビニール袋から、

モンブランと、三ツ矢サイダー。




「え」

私は、つい声を漏らした。


驚きと、少しだけ引いた。



だって、そのふたつは私の大好物。



なんで。



あれ、なんで知ってるの。





「私の好きな食べ物、知ってるの…?」




「んー?まぁ、そらな。誘拐する前からいろいろ調べたから」



こわっ。



ふつうにこわっ。



かぱ、

と、モンブランの蓋を開ける。


つやめく栗を先に食べてから、

クリームを頬張った。



「んん、おいひい…」

久々に食べたかも。



三ツ矢サイダーも、安定。



誘拐犯と、女子高生。


異様な光景なのに、


私はなぜか落ち着いていた。