私に恋した誘拐犯

「そっか。」


彼は、そう言うと、また無言になった。





車は、

コンビニの前で止まった。



「俺は、今から今日の夕飯を買ってくる。…逃げてもいい」




「え?」




「逃げてもええから……でも、おるんやったらおってええ」




「え?」





頭の周りにはてなマークがたくさん浮かぶ。



全然わけわかんない。




「お前も腹減ってるやろ、買ってくるわな」


「あ、うん…」




そんなの、待っとけ、って言ってるようなもんじゃん。



逃げれたのに、


私は、逃げなかった。




こういうのって、

私が同意したことになって、彼は捕まらないんだろうか。


んー、むずかしい。



ポケットから携帯を取り出す。


グループのLINEが、

たまっていた。



うん、誰からも来ていない。


お母さんも、私のことなんて忘れているんだろう。


誘拐されて、ちょうど良かったかもしんない。








数分して、

彼は戻ってきた。