私に恋した誘拐犯

「え……?」


私の声が震えている。



「めっちゃ冷静やけど、怖くないん?こんな、誘拐みたいなんされて」


おそるおそる、

その人の顔を見る。






「…っ」



なんだろう。


かっこいい、というよりも、


魅力的、な顔。



切れ長の目は、まっすぐ前だけを見ている。



少し、焦りを感じる瞳。

捕まることとか、考えているのだろうか。


髪色はどちらかというと、明るく、ほどよくスタイリングされている。




ちら、


彼の瞳が私をとらえた。




「聞いてるん?」


形のいい唇が動く。


「あ、うん、聞いてる」



関西弁だ、この人…



「怖いやろ?しょーみ」


こわい。


けど、こわくない。


なんか、こわくない。



「少しだけ…。」

そう言って、私は前に向き直った。