私に恋した誘拐犯

車内はしん、としていた。



誘拐?


殺人?


強姦?



いろんな考えはぐるぐると頭を回るのに、

なぜか私は逃げれなかった。



黒いパーカーに身を包んだその人は、

アクセルを踏むと、

車を進めた。



まるで、

今日、1日のしょうもない出来事が、

吹っ飛んでしまうくらい。



このまま監禁されちゃうのかな。


まぁ、誰も悲しまないだろうけど。



こんな時でも冷静な自分がこわい。








「こわくないん?」


突然、その人は、声を発した。