私に恋した誘拐犯

グッ


と、手を掴まれた。



少し、ビクッとした。



みく?だれ?お母さん?

一瞬で脳裏に人の顔が浮かび上がる。



だけど、振り返ったときにあった、


その顔は──────。








その後のことは、

曖昧で。


とにかく、ぼやけていた。


黒くて、

こわい。


車に、連れ込まれた。



逃げろ。

本能はそう言っている。


逃げれるかな。


でも、脚力じゃ、相手が勝つ、とおもう。


しかもこんな雨じゃ。




こんな時に、私はなんて冷静なことを考えているのだろう。





車の中は、

淡い芳香剤の香りがした。