私は、意を決して、そのケーキの入った紙袋を廊下にある業務用のゴミ箱に投げ入れた。

祐樹からの呪縛よ、私から消えてなくなれ…
ううん、祐樹からの呪縛じゃない、きっと、私が作り出している未練だけの想い。
このグチャグチャになったケーキと一緒に、私の元から消えてなくなれ…


私は自分で投げ入れた紙袋を、もう一度ゴミ箱の蓋を開け覗き見た。
そして、思いっきり蓋を閉める。

バイバイ、祐樹…
バイバイ、私の未練…


私は何だかすっきりした気分で、会社の入っているビルの正面玄関を出た。
普段は裏口から駅へ向かうのに、今日は、いつもと違う事をしたかった。


「神谷…?」


外に出た途端、私を名字で呼ぶ人がいる。
私が驚いて振り返ると、そこには今朝のあの男の人が立っていた。

神谷って…?
え? あなたは誰??