私はそのグチャグチャになったケーキを、とりあえずロッカーの中にしまった。
こんな状態になったケーキを祐樹に渡せるはずもなく、でも、だからといって捨てることさえ私にはできない。

ここの会社は社長が若いせいか、友チョコや義理チョコは禁止していた。
そんなくだらない事にお金を使わずに、本命の恋人にお金をつぎ込みなさいという真っ当な持論を持っている。

だから、皆に配る事もできず、いやあんな状態のケーキを皆に食べさせるほどマヌケではないけれど、何だか心がこもってた分、諦めが悪い私がいた。

デスクでパソコンを打ちながら、窓から見える外を眺めてみる。
どんよりとした灰色の雲が、青空を飲み込んでいく。
見るもの聞くもの全てに前向きになれない自分。

そんなグダグダな想いを抱えながらあっという間に時間は経ち、バレンタインデーの今夜に何も予定がなくなった私は、それでもダラダラと会社に残り時間を潰した。

女子更衣室はもうガランとしている。
彼氏がいる人は、きっと、待ち合わせの場所に向かっているのだろう。

私は魔のロッカーを開けてみた。
可哀想なグチャグチャになった私のケーキは、もう死んだも同然だ。