我ながら無茶をしたと思う。

人の舞台に上がりこみ、ジャックするなどという行動に出た自分自身の激しさが信じられない。

拓斗と奏汰がバック演奏を中断し「カナリア」を演奏してくれたことが救いだった。

お互いの気持ちを確認し合えた嬉しさと、観客の声援に胸が震えた。

俺は花音に一言謝り、拓斗と奏汰が舞台の片付けを終えるのを待って、マネジャー速水さんの元に向かった。

事務所では俺のしでかした騒動で、舞台を乗っ取られたバンド側からの苦情処理に追われていた。

「ったく、やらかしやがって。思い切ったことを……」

速水さんは口では言いながら、口ほどには険しい表情をしていない。

「覚えておけよ。責任はとってもらうからな、和音」

ギラついた瞳に怒りは感じられない。

「カナリアを越えてやるぜ」

拓斗が俺の顔を覗き込み「なあ、和音」と、俺の肩を抱き寄せた。