和音くんは言葉をつっかえながら、辛そうに声を震わせる。

「か花音。やーと、ああ会えた」

和音くんに会えたことが嬉しいのに、和音くんが話すのを聞いていて目が熱くなった。

喉の治療と吃音治療を兼ねて、ヴァイオリン留学して1年。

和音くんはまともに喋れないという酷い吃音に悩んで、一流のボイストレーナーのレッスンを真面目に受けてきたに違いない。

なのに吃音は治らなかったんだと思うと、どんな気持ちだろうと悲しくなる。

「きー聞き取りづづらいだろう。ご、ごめんな。ででーも、し喋れないからとひ筆談にた頼ーってたら、いいつまで経ってもな治せないから」

治したい、諦めたくないという和音くんの強い意志が伝わってきて、胸がジーンとした。

前髪で目元を隠し、鍔のある帽子を目深に被って、洋服をワザとダサく見えるように着崩したLIBERTEのボーカル綿貫和音。

だけど、あたしは和音くんがLIBERTEの綿貫和音だとバレやしないか気が気じゃなかった。