士気の下がった部員たち、花音のしょげた顔。

俺は今日の練習は無理だと思い、花音に練習時間を切り上げさせた。

花音と練習室の鍵を返し、花音が飛び出していった1年生に連絡を入れたが返事はなかった。

花音と校門に向かうと、苦虫を噛み潰したような表情の女子が門柱に凭れかかっていた。

「川元さん!」

「どうして?……わたしの方が正確で先輩たちよりも上手いはずなのに、どうして先輩たちの歌の方が綺麗に聞こえるんですか?」

腫れぼったい瞳が俺を見上げ、睨みつけていた。

「本当に気づいていないの?」

花音の問いに、川元奈保子は「えっ!?」と首を傾げる。

「が合唱はちチームワークだ。ひ1人でう歌うのでーはない。めメゾ、あ合わせてう歌って」

俺は唖然としている川元にはお構いなしに、メゾパートを歌った。