隼人は私が通っている華坂(かざか)高校に首席で入学してきた。
隼人なら、絶対もっと上の高校にいけたはずなのに、どうしてだろう?

「ねぇ、隼人。」

「ん?」

「どうして、華坂に入学したの?
隼人なら、もっと良い高校行けたでしょ?」

「あー、まぁ、特に意味はねーけど。」

「えぇ!勿体ない!!隼人なら、もっと頭良いとこも、バスケ強いとこも行けたのに。」

「別にいーだろ。なんだって。
俺が納得して行ってんだからさ。
それとも、なに? 美由は俺と同じ高校じゃ嫌だった?」

「そんなこと言ってないよ!」

「ほんと?嫌じゃない?」

「嫌じゃないよ。小学校、中学校ってずっと隼人と一緒だったから、高校一年の時はなんか寂しいなって思ってたもん。」

「ん、そっか。……俺も。」

「え?」

「美由と一緒じゃねーと、つまんねーんだよ。」

「そ…」

「…こんなに、からかいがいがある奴なんて、滅多にいないじゃん?」

「…また!!!」

また、人をからかってる!!
最近、隼人のこうゆう絡み増えた気がする。
いつからかな、隼人が華坂に入ってきて、二人で通学するようになってきてからかな。

それまでは、優しい弟って感じだったんだけど、ここ十ヶ月、なんかすごいいじわる。

「隼人、なんで、そんな意地悪になったの?」

「意地悪?」

「前は、そんなにからかったり、バカにしたりしなかったのに。
最近、なんかすごいじゃん…」

「………はは、ごめんごめん。」

「謝罪も流してる感じだし。」

「流してねーって。」

「流してる!こっちだって、傷つくんだからね!」

「うんうん、そーだよなー」

「ちょっと隼人!」

だんだん会話が嫌になってきたのか、隼人がゲームに神経を向けたので、私はムカついて、隼人とテレビの間に割り込んだ。

「美由、テレビ見えない。」

「見えなくしてるの。」

テレビの前に正座していても、テレビをどうにかして見ようとして、私に視線を合わせない。

「ねぇ、なんで、最近ほんとのこと言ってくれないの?」

「ほんとのことって?」

「いろいろ。
……私のこととか。」

「美由のことって?」

「んー、例えば、ほんとは邪魔だって思ってるとかさ。
ほら、私って所詮は他人だし、もし、邪魔ならちゃんと言ってほしい。」

「邪魔じゃねーよ。」

「じゃぁ、ちゃんと接してよ。ちゃんと、目を見て話して。」

隼人の膝に手をのせて、隼人の顔を覗き見る。
もう、なんで、テレビばっか見てんのよ。
人が話してんのに。

「……ん、わかったから、どいて。」

「わかってない。じゃ、ちゃんとこっち見てよ。」