姉さんが心配しているのは、私が魅力的な女だから、年頃の女だから、ではない。

私は四つ年上の香織姉さん、六つ年上の恭介兄さん、一つ年下の隼人とは血が繋がっていない。
いわば、他人である。



私が小学生の時に、両親は再婚した。
新しいお父さんはとても優しく、三人の兄弟達も私を快く迎えいれてくれて、私は暖かい家庭とはこうゆうものなのかと、その時初めて知った。



しかし、幸せな生活は長くは続かず、悲しくも、私が中学三年の時に優しかった皆の父親は亡くなってしまった。


残された私の母は、支えだった父親がなくなってしまい、一人で子供四人を育てる勇気や自信、責任がなかったのだろう、
ひとりで家を出ていってしまった。




母が消えて、私は行き場をなくし、どうやって生きていけばいいのだろうと途方にくれていた時に、手を差し伸べてくれたのがこの血の繋がらない兄弟たちだった。



当時、恭介兄さんは高校卒業から働いていたため、既に生活力を持っていて、香織姉さんは女子短大生で、早くも内定をもらっていた。
二人は養っていけるから、ここに一緒に住めばいいと言ってくれた。



血の繋がらない兄と姉に養ってもらうのは、少し気がひけたけれど、中学生の私はお世話になるしか道はなかった。



でも、あと一年で高校を卒業できる。
そしたら、しっかり働いて、この家族に恩返しをするんだ。



香織姉さんがいなくなってしまうのは悲しいけど、今、バイトしている洋菓子店が高校卒業後、パティシエ見習いとして雇ってくれると言ってくれているから、その選択肢を切り捨てたくない。



専門学校に行くより早く働きたいし、どうせ、働くなら、好きなことをしたい。


今のバイト先には一年生の時から、すごく良くしてもらってて、あそこで、ちゃんとしたパティシエになれたら、素敵だと思う。