肉の焼ける、香ばしい匂いが充満してる。
焼肉屋ジャンジャンは、私たちが昔からよく行ってるお店で、家の近所にある。
店主のおじさんとおばさんもすっかり顔馴染みだ。

私たちはおばちゃんに隼人も後から来ることを告げて、四人がけの席に座っていた。
兄さんがいつも通り、カルビやホルモンを一通り頼んでくれて、焼くのも兄さん一人でやっている。

私はいつも食べる専門。

「美由は、結局どうするの?香織についていくの?」

「まだ悩んではいるけど、こっちに残るつもりだよ。」

「なんで?」

「えっと、高校に友達もいるし、バイトもあるし…」

「そっか。じゃ、こっちで進学するんだね。」

「あ、進学はしないつもり。」

「どうして?」

「働きたいなって思ってて。」

「やめたほうがいい。
今は大学行っといた方が後々楽だから。」

「兄さん行ってないじゃん。それに、お金かかるし…」

「行ってない俺が行っといた方が良かったなって思うから、言ってるんだよ。
あと、お金のことは心配しなくていい。
それぐらいの稼ぎはあるから。」

「そ、そう言ってくれるのは嬉しいけど…」

でも、それじゃ、恩返しできない…

「お前のことだから、早くうちを出なきゃとか、俺らにお金渡さなきゃとか思ってんだろうけど、そんなの俺らは誰も望んでないからな。」

「え…」

「特に、俺は、お前が側で笑ってくれていればいい。」