隼人がチラッと私の方を見た。
やっと見た!!
でも、すぐにプイッとそっぽを向いてしまった。

「ちょっとコンビニ行ってくる。」

「え?」

「ポテトチップス食べたくなったから、買ってくる。だから、どいて。」

「いやいやいや、どこをどうすれば、今ポテチ食べたくなるのよ!」

「いーから!!」

力強く膝に置いていた手を引き剥がされ、隼人はそのまま身支度を整えて、ものすごい早さで玄関から出て行ってしまった。

もー、なんなの!!
からかったり、バカにしたり、優しくしてくれたと思ったら、逃げたり。



「ただいまー」

「あ、この声は…」

玄関に迎えに行くと、そこには恭介兄さんが立っていた。

「恭介兄さん!おかえり!」

「美由、ただいま。」

そっか、もう夕方か…
あ!!晩御飯!!
隼人とずっとゲームしてて、晩御飯の準備すっかり忘れてた…!!!

「あ、晩御飯の支度するね!!」

「あれ?香織は?」

「友達とお出かけ。遅くなるって。」

「あぁ、転勤するからか。会えなくなる友達、たくさんいるだろうね。」

「うん、そうだね。」

「飯、まだなら、どこか食べに行かないか?」

「あ!行きたい!!」

「美由、何か食べたいものある?」

「えっと…あ、隼人も今日いるの。今、たまたまコンビニ行ってて。」

「あ、そうなんだ。あいつ、勝手においていくとうるさいからな。
…じゃ、焼肉ジャンジャンでも行くか。
あそこなら、先行ってるってメールすれば自分で来るだろ。」

「それ良い考え!!ちょうど、お肉食べたかったんだー」

「俺も。じゃ、ちょっと着替えてくるよ。」


恭介兄さんは基本やる気なさそーな感じなんだけど、すごい頼りになって、ぶっちゃけた話、私の初恋の人でもある。

昔から、私をいつも守ってくれて、大事にしてくれて。

初恋っていっても、どうこうしたい!とかじゃなくて、ただ、ときめいていたいっていうか。
一緒にいると、ルンルンな気分になるっていうか。

私がもう少し年上で、綺麗だったら、自信持って、告白とか出来たのかな…


「なに、突っ立ってんの?」

恭介兄さんが私の頭をポンポンする。
これ、兄さんの癖のひとつ。

「あ、隼人にメール!」

「しといたからいいよ。さ、行こ。」

「うん!」