「とりあえずこれ書いて」


渡された紙を素直に書く。氏名、住所、電話番号、親の名前。


かけた紙を黙って渡すと男はじっくりと確認した。


「じゃあ親御さんに連絡とってもらっていいかな」


まずい……


「…………」


「聞こえてる?」


私が黙りっぱなしなのが気に入らなかったのかわざとらしく聞いてくる。


「親、言わなきゃだめですか?」


「君未成年だからね、この件を一人で解決できる権限も能力もないんだよ」


いやみったらし言い方にイライラしながらも私は食い下がった。


「お願いします……」


「ダメだね」


即答か……


「ホントに……」


「はぁ……」


男は腕時計を見るとため息をついた。


「私はもう時間がないから駅長呼んでくるから、それから社長に連絡行くと思うから、そのつもりでね」


そう、私が通学に使っていた電車は私鉄、世界でも有名なある会社が営んでいるのだ。


男が立ち上がりドアを開けると出ていかずに立ち止まった。