「あのね、将生。今回の移動、表向きは会社からの辞令ってことになってるけど・・・本当は、あたしが希望したの」

「意味、わかんねぇんだけど」

「ちゃんと亜弥にも話そうと思ったんだけど、タイミング逃しちゃった」


苦笑いを浮かべるあたしに、将生は鋭い視線を向ける。


「何か、あったのか?」

「実は・・・妊娠したの。あたし」

「はぁ?!」


将生は心底驚いたように、大声で言う。


「ちょっと、うるさいよ。他のお客さんも、いるんだから」

「悪りぃ。いや、でも・・・いきなり、変な冗談言うから」


冗談じゃないし。


「う。嘘、だよな?」

「嘘ついて、どぉすんのよ。本当のことだから」

「いや。あ、でも・・・、もし仮に本当だったとして、相手は誰だよ」


そんなの、将生でも教えるわけ無いじゃん。