「実は、妊娠しています」


あたしの言葉に、社長は驚いたように瞳を丸くする。


「まさか、高梨くんが結婚する日が来るとはね」


どこか嬉しそうな社長に、次の言葉が言いづらくなる。


「妊娠はしましたが・・・結婚は、しません」

「・・・そうだったのか。これは、失礼なことを」

「いえ、お気になさらないでください。なので、仕事はなるべく続けたいと思っています」

「そう言ってくれて、嬉しいよ。妊娠したからと言って、会社を辞める必要はない。それに高梨くんのような優秀な人材を失うのは、こちらとしても大きな損失になるからね」

「ありがとうございます」


深々と、あたしは社長に頭を下げた。