柚希と会話したせいで、つい素の自分に戻りそうになるのを無理やり振り切って、デスクに向かい、すぐに受話器を上げ、保留を解く。

『悪い、佐藤、待たせたな』
『ホント遅せえぞ、急いで連絡しろって割には』
『すぐ連絡くれたってことは、お前もまだ職場か』
『うるせぇ、こっちは別の事業所から、明日出荷の急な発注が入って、日付が変わるまで仕事だ』
『クリスマスだってのに、それはまた災難だな』
『くだらねぇ、ただの日だろ』

吐き捨てるように言う佐藤らしい受け答えに、苦笑い。

入社当時は同じ営業だった佐藤が、どうにも接客が性に合わないと、大卒の若手では珍しく工場勤務に異動してから4年。

元々、技術系の専門知識を多く持っていた彼には適材適所だったらしく、今や頭角を現して、既に管理職候補に名前が挙がっているらしい。

『で、どうだ?送った製品、有りそうか?』
『有るわけね~だろ…って、言いたいとこだけど、運が良いな。偶然にも有りやがる』
『本当か!?』
『嘘言ってどうする。正確に言うと、他の事業所へ卸すもんだが、そっちは年明けでも構わないそうだから、今回は先にそっちに廻せるそうだ』
『あ~助かったぁ、やっぱり持つべきものは優秀な工場勤務の同期だな』
『同期内の出世頭がよく言うよ…言っとくが、これ、貸しだぞ。園田』
『分かってるよ』

取り急ぎ、今からすぐに取りに向かうことを伝えて、電話を切った。