自由を求めて一人暮らしを始めてから久しいが、誰かと生活するというのは、毎日のようにこういう朝を迎えるということなのだろうと思うと、案外悪い気はしなかった。

いつもの、一人で迎える朝とは明らかに違う風景に、何だかくすぐったい。

俺は、柚希に急かされ、多少疲れは残っているものの、やけにスッキリした気分でシャワーを浴びるために、浴室に向かう。

昨日着ていた服は、昨夜のうちに(俺が風呂に入ってる時だろうか?)洗われていて、シャワーから出るときには、アイロンのかかったワイシャツがきちんと用意されていた。

『簡単なものしかないからね』

洗面で身支度を整え、リビングに向かうと、テーブルの上には、ワンプレートにトーストとハムエッグ。

席に座ると、そのタイミングで、珈琲が出される。

『美味そうだな…』
『何よ?急だったんだから仕方ないでしょ』

素直に言った言葉が、どうやら嫌味に取られたらしい。

『いや、本気でさ…良い奥さんになるよ、柚希』
『は?…どうしたの、隆弘…なんか、昨日からちょっと変だよ』
『そう?』

訝し気に俺を見る柚希を前に、何でもないふうにトースターにかぶりつく。